印象に残った看護体験

新潟南病院看護部は患者・家族に寄り添った看護を提供したいと努めています。そこで年1回,「印象に残った看護体験を語る会」を行っています。その中からいくつか事例を紹介します。

最後の家族旅行に行ったAさん

2017.10.12 掲載

Aさんは初めて会った時から、明るく感じの良い方でした。悪性の疾患を患っておられて、治療の末一旦は退院できたものの、次に入院してきた時には脳に再発しており、呂律が回らず、言いたいことが思うように伝えられない状態でした。私もAさんの言いたいことをくみ取ることが出来ず、悔しく思っていました。一度は会話が出来るまで改善しましたが、再び症状が悪化していき、主治医からは予後が厳しいと説明がありました。

そんな時、ご家族からAさんを温泉旅行に連れていきたいという希望がありました。寝たきりで意識もほとんどなく、いつ状態が悪くなってもおかしくないAさんを、「この状態で連れて行くのはどうなんだろう」と皆が思いました。しかし、家族はあきらめませんでした。その温泉は家族の思い出の詰まった旅館だったそうです。

そこで、旅行に連れて行きたいという家族の希望を叶えるため、私たちは動き出しました。看護師は着替え仕方や異常の見分け方、対応の仕方について、リハビリ職員からは移乗の仕方、食事についての注意点を指導しました。また状況を先方の旅館に伝え、協力していただくことも行いました。準備万端整えて、一泊温泉旅行に出かけることが出来たのです。熱を出して早めに帰院する事にはなってしまいましたが、Aさんはとても嬉しかったのではないかと思いました。

その後まもなくAさんはお亡くなりになりました。いつもどんな時でも、ご自身が具合の悪い時でも、必ず「ありがとう!」と言ってくださった心優しいAさん。きっとご家族にとっても良い奥さんであり、良いお母さん、おばあちゃんだったのですね。最後に家族での素敵な思い出が出来て、良かったです。医療者、ご家族、皆で協力することで、不可能と思えたことも可能にすることが出来る・・・そんなことを学ばせて頂きました。